2.海の絵

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 けれど今、目の前に広がる海は、その名を冠した貴石とは似ても似つかない色をしていた。  口に含めば、水が滲みだしそうな色の石に対して、海は岸から吸い寄せた砂が混じり、灰がかった鈍い青色をしている。  まだ湖のほうが、石のイメージに近いんじゃないのかな。  茶が混じる砂の色、雲の灰色。  どちらがまざっても、かろうじて青を保つ海。  砂浜も少ないせいなのか、ここには遊びに来る子供の姿もない。  釣り人もいない。  繰り返し新しい波を作り出す海岸で聞こえるのは、潮騒だけだ。  ここへは何度も来ているはずなのに、こんなに彼らの家に近かったのに、どうして姿を見かけることもなかったんだろう。  私はガードレールに肘をつき、本当に家を見に行くかどうか悩み続けた。  そのうちぼんやりと右足で石を蹴る真似をしたら、本当に石があったらしい。  つま先に小石があたった感触の後、 「いてっ!」  真下の砂浜から非難の声が上がった。
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