2.海の絵

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 驚いて下をのぞき込んだ。  道は砂浜より二メートルは高い。  高波が来たときのために、そう作ってあるのだろう。真下にはなだらかな砂浜が海へと続いている。  その砂浜の道の下、コンクリートが壁のように切り立っている場所。  私からは死角になる所に、見覚えのある顔があった。  野村光司だ。  左手にはスケッチブック、右手に鉛筆を握っている。  座っている彼の右隣には、ナイロンの鞄と上に広げられた色鉛筆のケースらしき物が見える。  そして私は妙に納得した。  彼がここから海を眺めている分には、出会うことはなかっただろう。  なにせ彼は真下で海を見ているし、こっちは真下をのぞき込もうなんて考えもしなかったのだから。  それにしても石を投げても人に当たるかどうか分からない場所で、会う気のなかった知り合いにおもいきり当たるとは。 「ご、ごめん!」  石を蹴ったのは自分だ。  右手に見える階段を駆け下りて、彼の所まで謝りに行った。  ここで逃げたら不審者丸出しだから、後ろ暗いところもない見知らぬ人間なら、普通に謝るだろうと思ったから。
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