2.海の絵

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「たぶん、想像で書いても、自分の気に入る絵にはならないだろうってのだけはわかる」  拗ねた気分で、彼の近くのテトラポットに腰掛ける。 「ようするに、私って想像力が欠如してんじゃないかなって。 今美術で絵本作れなんていわれてるけど、なにをどうしていいのかさっぱりわかんない。 こう、どこかの童話を真似してみてもさ、結局元ネタそのまま書いているだけになっちゃうし。 想像しようにも、何を主人公に描いたらいいかもわからないし」  ひとしきり私の愚痴をきいていた野村君は、何を思ったか色鉛筆のケースを差し出してきた。 「な、何?」 「貸してやるからさ、それで今日帰ってから海でも描けよ。 俺の絵を真似したってかまわないし、このまま描いてもかまわないし。 ほら、その色鉛筆二十四色入りで三千円もするんだ。こんな高いの使えば、なんとなくいいものが描けそうな気がしてこないか?」 「もしかして、絵の練習しろってこと?」  「描けない」と愚痴ったから、親切にも助言してあげようとしてるのかと思ったが、 「いや、描き友達がいてもいいかと思って」  そう言った野村君は、子供の頃のように笑った。
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