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「ついでにさ、毎日描いてるうちに作品もできると思うんだ。
騙されたと思ってやってみても損はないと思うけど」
「それって、毎日ここに来て海を描いたほうがいいってこと?」
「授業中に悩むより、ここで下書きして授業中に清書したほうが効率もいいし、間違いなく学期中に出来上がると思うけどな。もう時間ないんだろ?」
私は唸った。
授業はあと二回しかない。
その間に課題を提出できなければ、夏休み中に出しにくるよう先生に言われている。
期限を越えてしまったら、通知表に初のアヒルさんか煙突さんをお迎えする事になるだろう。
更になんとなく騙されてみようという気になったのは、本当に絵が好きだから勧めているという彼の姿勢が気に入ったのもあるけれど……。
十年近く話していなかった兄と、また仲良くできそうだと思ったからだ。
「じゃあ、騙されてみるかな」
私は雨が降らない限り野村君がここへ来る事を確認して、海辺を立ち去った。
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