2.海の絵

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 部屋に戻り、寝巻き姿で小さなベットの上に転がって、天井を眺めた。  砂浜の汚れた茶色が混じる色とは比べ物にならない、きれいな白い天井。  私はふと思いついてペンダントトップにしていた指輪を、スケッチブックの上に置いてみた。  それから出しっぱなしのノートをひらいて、何も描いてない真っ白な紙面にも置いて比べてみる。  やっぱり白いほうが指輪のアクアマリンが輝いて見える。でも生成り地の上で鈍く霞んだ色も、なんとなく「らしい」気がした。  私は野村君に貸してもらった色鉛筆のケースを開ける。  その中から一番アクアマリンに近そうな色を選んで適当に塗ってみる。  もう少し深みが必要だろうか。  今度は水色を足し、さらに碧を足し、白を足してみたりと様々な工夫をしてみた。  でも夜中になっても、納得のいく色にはならないまま、その日は努力を放棄した。
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