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授業中、見覚えがある理由を思い出した私は、美術室からの帰りにまた会えないかと視線を配る。
やがて階段を降りてくる集団の中に彼を見つけ、再び食い入るように顔を見つめてしまった。
――ああ、間違いない。
確信と、懐かしさに視線を外せずにいると、隣にいた歌子(うたこ)にひじでつつかれてしまった。
「ねぇ、野村君が気になるの?」
歌子は細っこいだけがとりえの私と違い、かかとの高い靴をはかなくても長いスカートが似合う背丈と、大人っぽい雰囲気の持ち主だ。
彼女の切れ長の目も、常々うらやましいと思っていた。
「違うの、どっかで見たことがあるような気がして。親戚かなんかだっけって」
「親戚だったらあっちの方も気づくじゃない。違うんじゃないの?」
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