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いくらなんでも、穴だらけの言い訳だったかなと、内心で思う。
しかし歌子はは上手く曲解してくれた。
「なーんだ、せっかく真奈にも春が来たのかと思ったのに。
野村君、わりと可愛い顔してる方だし」
歌子は恋愛話が大好きだ。
現在彼女がご執心なのが、一目ぼれから始まるドラマだったせいもあって、こんな絡み方をしたのだろう。
「私じゃ相手に迷惑だよ。それよりさ、課題どこまで進んだ?」
そんな意味で彼の顔を確認したかったわけじゃないので、早く話を終わらせようとした。歌子はそれに乗ってくれた。
「ん、半分ぐらいは色つけ終わったかな。真奈は?」
「……まだ」
「まだって?」
自分で話題を振ったはずなのに、非常に言いにくい。
「まだ、下書きしか、してない」
「えええええっ! ちょっと真奈、授業あと二回しかないよ? 何を描くのかは決めてるの?」
「いや……それが。いろいろ下書きはしたんだけど、決まらなくて」
私の返事を聞いて、歌子はため息をつく。
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