31人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱりあれね。美術が苦手ってのは、心に潤いが足りないからよ。
せっかくだから、本当に野村君とお友達になってみない?」
「そういえば何で名前知ってるの? 知り合い?」
「町内会の回覧、彼の家に回してんの。
下の名前は光司で、わけあって一年遅れで進学してるんだって。
お父さんと二人暮しで、わたしらが中学の時に、今の場所に引っ越してきたんだよ」
「へぇ……」
下の名前を聞いて、ますます間違いないと私は確信した。
と同時に意外だ、と思った。
私が知る限りでは、離婚してもう十五年近く経っているのに。
「再婚してないの?」
「みたいよ。ここ一年ぐらいは見かけないけど、それまでは毎月違う女の人が出入りしてたの、私も見たもん。
なんにせよ、落ち着く気はなさそう」
恋多きタイプというのは、聞いていた通りだ。
最初のコメントを投稿しよう!