2.海の絵

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 歌子の家には、今まで三度くらい遊びに行っている。  私の家と歌子の家は、高校から正反対の方向にある。  ちょうどどちらも、学校まで徒歩十五分の距離にあった。  ゆっくり散歩しながら行けないこともないけれど、知り合いに目撃される率が高いので、私は近くまでバスに乗った。  乗車したとたん、動悸が激しくなっていく。  私は、何をしに行こうというのだろう。  野村光司に会いたいわけではない。会っても何を話したらいいのかわからないし。  ただ、ほんの少しのぞいて見たかったのだ。  歌子から仕入れた噂からは、幸せとは言えない状況みたいだった。  けれど、それなりに平穏な生活を送っているらしい。  そういったものの片鱗を見たかった。  昔、父や兄と呼んでいた人の家を。  私は四人で暮していた家から、出て行った時のことを思い出す。
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