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どうやら大学に泊まり込んでいるらしく、父親が「姉ちゃんがいないと家が広く感じるなぁ」と呟きながら夕飯のポトフを口に運んでいた。「広く感じる」のは開放感か、それとも父親という立場からの寂寥感からかはわからなかった。
「日が落ちるのが早いね。まだ18時なのにもう暗い」
「そういや来週クリスマスじゃん」
コンビニに辿り着いた時、俊太が店内を流れるクリスマスソングに耳を傾けた。
雨が夜更け過ぎに雪に変わることは熊本の平地ならまずない。そういやホワイトクリスマスの経験は一度もない。クリスマスソングを口ずさみながら渚はブレザーのポケットから携帯を取り出す。
「政道の姉ちゃんは、クリスマス家にいんの?」
「いないね。記念日とかイベント大好きだから。俊太のお姉さんは?」
「うちは寺だから、クリスマスあんま関係ねぇな。この時期はクリスマスのデコレーションより渋柿を湯通しして干す作業ばっかしてるわ」
「お前の姉ちゃん、渋好みだな」
「干し柿好きなんだよ、あいつ」
渚がアドレス帳から姉を探していたまさにその時、政道と俊太の左手にも各々の携帯で同じことをしていた。
【コンビニに居るけど、何かいる?】
渚、俊太、政道は保育園からの腐れ縁でもあり、姉という生き物を持つ戦友でもある。
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