弟たちの憂鬱

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物心がついた時から「弟」という身分を与えられた三人は、友達と遊びたくても姉の一存でままごとの相手に抜擢され、おやつは8:2なのに「はんぶんこ」と言われ、嫌いな食べ物を押し付けられ、喧嘩をすれば度々弱点を突かれてきた。 そのうち、姉の背丈を越え、力も強くなれば立場は逆転するかもしれないと思っていたのに、現実は「弟がより便利になった」という事だけだった。高いところに手が届く弟、重いものも持てる弟、いざという時頼りにならぬが盾にはなる弟。 三人が学んだことは、どれだけスマートに姉を回避出来るかという酷く消極的なものだけだ。 故に自然とこのメールを送ってしまうのもわかって頂けるだろう。処世術に過ぎないのだ。 三人は情けないような気になりながらも”先の平和”のために静かに送信する。 コンビニに寄って何も買って来なかったからと言って姉という生き物が不機嫌になる事はないが、この場合の”先の平和”とは「欲しいものがあるからコンビニつい来てよ」というよくわからない付き添い命令がある場合に備えたものだ。面倒臭いし、寒いし、だからといってそれを渋ると出てくるのは父親である。「痴漢とか出たら危ないだろう。ついて行ってあげなさい」と…。それを言われれば何とも断りづらくなるのは男だからだろうか。そして、姉に出くわす痴漢の方がよっぽど危ない気がするのは、弟だからだろうか。 「渚の姉ちゃんは?今年のクリスマスは家にいんの?」     
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