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「知らない。いないならいないに越したことはないけど。あ、でも去年は居なかった」
「おっ!デートか!?」
「政道の姉ちゃんと映画見に行ってたよ」
「そういえばそうだったね。山本五十六見てきたって言ってた」
「やまもといそろく」
「クリスマスとえらく離れた単語だな」と俊太が腹を抱えて笑った。
「あ」
政道がそう言って携帯の画面を見つめていたかと思うと、それをスッと2人に差し出す。
彼の携帯には【お金かな】という文字と、羽根の生えた札束の絵文字が表示されていた。
「政道の姉ちゃんはブレないな」
「最近、ネットの検索バーの履歴に”石油王 婚活”って出てたんだよね」
「マジかよ。石油王狙ってんの?」
「いや、本人は石油王よりハイパー石油王を狙ってるみたい」
「ハイパー石油王って何だよ」と俊太が真顔になると、政道はいつもの柔和な表情で「わからない」と答えた。ハイパー石油王なんて、きっと誰もわからないだろう。
「政道の姉ちゃんはまだいいよ。うちの姉ちゃん、”油田 買い方 アメリカ”って検索してたの見たことあるよ」
「アメリカぁ?油田ってアラブとかじゃねぇの?」
「2020年までに原油生産量が世界最大になるのはアメリカらしいよ」
「へぇ…渚のお姉さんはこう…相変わらず逞しいね」
「石油王探すより…油田買うんだな」
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