エピローグ

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* 青い空。白い雲。あ、キリンだーー いや、まちがい。イワシだね。 この島に来たときとは、雲の形が変わってる。秋空になっていた。 フェリーが乗り場を遠ざかる。 颯斗くんや海歌ちゃんが、ずっと手をふっていた。 走りだす船上から崖のほうを見ると、そこにも手をふる姿がある。蒼太くんだろう。 「みんな、みんな、元気でねぇー!」 さけんだけど、もう聞こえないかな? 蘭さんは淡白。 「身も心もリフレッシュ。早く次の話、書こ。猛さんも、かーくんも、僕に任せてね。かせいであげるから」 ありがたやぁー。 神さま。仏さま。蘭さんさまぁ。 おがんでいると、崖の上の蒼太くんのとなりに、誰かがならんだ。大人の女の人だ。こっちに向かって手をふってる。 「絢子さんだね」 「ああ。よかったな」 「うん。また遊びに来ようね」 「そうだな」 「来年の夏ね」と、これは蘭さん。 夏の別荘と認識してるらしい。 ちゃっかりしてるよ。 三村くんがクギを刺す。 「おまえら、次は最初から、おれのこと呼べや? 事故ってから呼ぶんは、やめえや?」 「ごめん。ごめん。悪かったよ」 笑ってごまかしてから、話をそらす。 「あっ、それにしてもさあ。猛、まちがってるよ。南さんち、絢子さん一人じゃないよ? おばあちゃんがいるだろ?」 「えッ!」と、三村くんが奇声を発する。 「か、かーくん?」 蘭さんは、うろたえる。 「なに言ってるんですか? おばあさん?」 猛はニカッと白い歯を見せた。 いつもどおりの、いい歯ならび。 「そのこと、いつ言おうかと思ってたんだけどな。かーくん。あそこのうちのばあちゃん、とっくに亡くなってるぞ? 仏間に遺影、かかってたろ?」 ウッ……ウソだ! そんなのウソだぁーッ! 「やめてよね。猛。そうやって、すぐ僕をおどそうとする! だまされないからねぇ!」 「だましてないよ」 「ちがーう。だましてるんだ!」 「かーくんって、意外と見えるーー」 「わあ、わあ、わあッ! 聞こえない。聞こえないー!」 なんにせよ、楽しい夏休みだった。 悲しいこともあったけど。 僕らの夏は、こんなふうにすぎていく。 きっと、これからも、ずっと……。
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