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プロローグ
海鳴りが聞こえる。
もうじき、満潮か。
ここまで波が来るのも、まもなくだろう。
洞くつのなかの小さな祠。
竜神をまつる、ほこらだ。
ここで、さくらは殺された。竜神祭のさなかに。
犯人は、まだ捕まっていない。
会いたいーー
切実に思う。
だが、死んだ人間には、ふつうの方法では会えない。
ならば、祈るしかない。
「わだつみの神よ。さくらは、あなたのニエとなった。ニエの命を代償に、願いは叶えられるはず。ぼくの願いを聞いてくれ!」
蒼太の声は、岩かべに反響し、まるで千人の合唱のように聞こえる。
「ぼくは復讐を誓う! さくらの命をうばったヤツをゆるさない。そのためなら、ぼくの命をささげてもいい。だからーー」
この願いは叶えられるのだろうか?
ただ、波音だけが応える。
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