270人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、その子が、ほんとは自分の子どもじゃない。
そのことを娘自身に指摘されたら……。
「はずみで、殺しちゃったんだね?」
そう。犯人は、咲良の父。南義行だ。
南さんは犯行を全部、みとめているという。
警察に連行されてからは、憑き物が落ちたように、ガックリしてるんだそうだ。
「悲しいね」
「ああ。悲しいな。きっと、南さんの心の内には、ずっと、くすぶってたものがあったんだろう。それが、あの瞬間に爆発したんだろうな。
可愛くて、愛しい娘。でも、憎くて。やりきれなかったんだろうな」
「うん」
思えば、絢子さんの口調が、なんとなく歯切れが悪かったのは、そのせいか。
もしかしたら、夫が娘を……と疑ってたんだろうな。
その原因が自分の浮気のせいなら……それも、やるせない。
「じゃあ、咲良さんの服をぬがせたのは、巫女が入れかわってたことを隠ぺいするため。もしかして、遺体は洞くつのなかまで運んだわけじゃないのかな?」
「だろうな。島のみんなは、ほこらと岩場の溝が通じてることを知ってる。
だったら、わざわざ、洞くつのなかまで運ばなくても、岩場の溝に入れとくほうが手間がかからない。
最初のコメントを投稿しよう!