エピローグ

9/13
前へ
/215ページ
次へ
それに、洞くつの入口を見張ってたことにしとかないといけないからな。あまり長く、その場を離れることはできなかっただろう。 儀式が終わって、みんなが去ったあと、すぐに岩場の溝に遺体を入れて、あとは朝になってから見つけたふりをすればいい。 遺体は溝に運ぶ前、船のなかに置いといたんだろうし。その船で洞くつの前まで行くんだから、さほど時間はかからなかっただろう」 「のえるちゃんのことは?」 「もちろん、巫女の入れかわりを知ってたからだ。のえるが南さんを犯人だと知ってたのかどうかは、わからない。 ただ、何かのきっかけで、のえるが、その話を南さんにしてしまったんだろう。ほっとくことはできないと思われて、殺された」 何から何まで悲しい事件だ。 口は災いの元だね。ほんと。 「もうひとつ、わからないんだけど」 「ああ?」 「南さんは、なんのために、蘭さんをニエにしようとしたの? 蘭さんが事件のこと調べまわってるからジャマだったの? でも、それなら、僕らだって狙われるよね?」 猛は、さみしげに笑う。 「だからさ。はずみだったんだよ。ほんとに殺したかったわけじゃない。 きっと、竜神に生きかえらせてもらいたかったんだ。咲良をーー自分の娘をさ。 蘭をささげれば、死人でも生きかえりそうな気がするだろ?」 なんだか涙が出てくる。     
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

270人が本棚に入れています
本棚に追加