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最初の予定どおり、僕らは、そのあと一週間あまり、島で遊んだ。
海辺で打ち上げ花火とか。
浴衣でホタル狩りとか。
お寺で肝試しとか。
天体観測もした。天の川のキレイなこと。
京都の夜空はオレンジ色だからね(一部ね。一部。ネオンの光ぃ)。
こんなキレイな夜空を見るの、次は、いつのことか。
八月の終わり。
遊びあきた蘭さんが帰ろうと言いだす。
なので、帰る前日、僕らは南さんちに行った。
あらためて仏前に手をあわせた。
絢子さん、やつれてたなぁ。
「わたしのせいなんです。あの人は悪くないんです。咲良にも、あの人にも申しわけなくて……」
ハンカチに顔をうずめて泣く姿が、胸にズシッとくる。
すると、猛が言いだした。
もしかしたら、こいつ、最初から、そのつもりで、このうちに来たのかもしれない。
「この家、さびしくなりましたね。咲良さんはいなくなった。
義行さんも判決は、そんなに重くはないでしょう。でも、情状酌量はムリだろうと思いますしね。数年は帰ってこない。
あなた一人で待つには、この家は広すぎませんか?」
鼻をすすって、絢子さんは、ちらりと猛をみあげる。
猛は老武将のような貫禄で告げる。
「蒼太をひきとっては? あの子は、まちがいなく、咲良さんの弟だ。兄かもしれないが。面影がある。
きっと、あなたにとって、かけがえのない息子になると思いますよ」
わッと声をあげて、絢子さんは泣く。
二十も年上の女性を泣かせてしまう猛……やっぱり、天然レディーキラーだなぁ。
絢子さんは、コクコクと何度も、うなずいた。
咲良さんのことは悲しいけど、今度こそ、うまくいくといいね。
僕らは南家をあとにした。
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