それでも、海の碧み掛かった青さは変わらず美しかった。

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ちゃぷん。 足首に当たる波がくすぐったい。 ーーもっと奥までおいでーー 誰かに引き寄せられるように次の一歩が前に進む。 ーーもっと……もっとーー ゆっくりと一歩、また一歩……と沖の方へと歩いていく。 気付けば膝までの深さになっており、スカートの裾が濡れていた。 いけない、もう戻らなきゃ……。 踵を返そうとしたところに強い引き波がやって来て、彼女の足元にまとわりついた。 「きゃっ」 倒れそうになったところで何かに体を支えられ、運良く濡れずに済んだ。 それが人だと分かるまでに一瞬の間が開く。 「あ……ごめんなさい!」 跳ねるように相手から体を離そうとした、が彼女の背中に添えられた腕が思うように力を抜いてくれない。 「……あの、ありがとうございます。もう大丈夫ですから」 無言で漸く二人の体は引き剥がされた。 「すみません。お陰で転ばずにすみました」 笑って礼を言う彼女に対して、相手は明らかに怒っていた。 「ここで何してたの?まさか死ぬつもりだったんじゃ……」 「え!?や、まさか。そんなこと無いですよ」 彼女は瞠目し、驚いた。 心の奥底を見透かされたようで。 彼が全てだったわけではない。それでも、彼の浮気相手が彼と自身の職場の後輩で、以前から苦手な存在だったあの女に取られるなんて。そう思うだけで悔しくて堪らなかった。 当て付けに死んでも構わない、一生私の死を二人で背負っていけばいい。そう思って実行できる位には悔しさがあった。
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