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「あぁあ、つまんない。せっかくVIPがたくさん来てるのに受付だなんて」
ホテルの創業記念パーティーでの事。
後輩の愚痴に、碧依は静かに笑った。
まだ、完全ではなくても上部だけは笑えるのは、ウエディングプランナーとして少しは成長したからだろうか。
周りは同僚との別れにショックを受けているのだろうと、随分気に掛けてくれていた。
でも、違う。
その恋人の事で傷付いていたのは、結局彼に抱かれる前までだった。
なんて、脆い関係だったのかしら。
碧依はまた小さく笑うと、後輩に言った。
「もうほとんどのお客様がいらしたし、あなたも中に入って良いわよ。ここは私だけで十分だから」
「え?良いんですか?」
先程とは打って変わって、花を散らしたように可憐に笑う後輩。
「ええ。楽しみにしてたんでしょ?」
「ありがとうございます!香田さんの食事ももらって来ますから!」
「当てにしないで待ってるわ」
彼女の軽さに、若さを感じながら後ろ姿を見送った。
一人残った碧依は名簿に目を落とした。
あと、来ていないのは……。
蛍光マーカーで名前を塗られていないその人達を数える。
……12名か。
名簿の名前と書かれている場所を覚えた。
来て名乗ったらすぐに消せるように、と算段をつける。
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