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「本当に失礼だ。反省しているなら許さなくもないけれど」
「勿論です。もう、二度と……目を合わすこともしませんから……」
彼と別れたときから既に後悔ばかり。それなのに求めた彼との再会が距離を感じさせるだけで、目の奥が熱を帯びる。
「は?何でそうなるの?違うでしょ?今夜はどうぞお持ち帰り下さい、とかじゃないの?」
悪戯っ子のように笑う彼。
恐る恐るゆっくりと顔を上げ彼の顔を見る。
「ね?君もそう思うでしょ?」
「や……それはちょっと」
ひきつる愛想笑い。それを見て、彼は不機嫌な表情になる。
「何なら今すぐかっさらっても構わないけど?二人でこのままどこかに消える?」
「とっとんでもないです!それは絶対に無理ですから!!」
真っ赤になる彼女を満足そうに見詰める目が甘さを醸し出す。
「じゃあ、上に部屋とってあるからそこでゆっくりと話そう。来なかったらどうなるか、とかちゃんと想像してから行動してね。待ってるよ」
カードキーを胸ポケットから取り出すと彼女の渋る手に無理矢理持たせた。
「じゃあ、また後で」
戸惑う彼女を残して、今度は彼が去っていった。
そんな……。
だからといって行かないという選択肢は無いと思った。
クビで済むならまだ良い。
ただ、都内でも最大級のホテルだ。そこの常務だもの。本気で自分を潰しに来れば容易いものだろうと、想像しただけで碧依は怖くなった。
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