それでも、海の碧み掛かった青さは変わらず美しかった。

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「そう?ならいいんだけど……。君、一人?」 「……私、もう行きます。助けてくれてありがとうございました」 視線も合わさずぎこちなくお辞儀をすると、ザブザブと波を漕いで彼女は陸へと足早に戻った。 今は一人で悲しみに浸りたい。放っておいて。 そう思った。 彼女が勤めるホテルの同系列のリゾートホテル。 社員割引が無ければ、一生無縁なほど高級な価格。彼との久し振りの旅行だから、と奮発したというのに。 ヴィラタイプの広い客室に、一人でいるのは、余計に孤独感に苛まれた。 夕食を終えてから、部屋に戻る気にもならずに再び海へと足を運んだ。 ざざんざざんと波打つそこに、サンダルを脱いで指先をつける。 砂ごと私を拐っていって……。 ざざんざざん ざざんざざんとその願いには答えずに、波はいつまでも足元を漂うだけ。 ざざんざざん 小さなため息を漏らして、先程脱いだサンダルを拾う。耳に掛けていた髪がさらりと落ちた。 この髪が好きだと言っていたくせに。嘘つき。 浮気相手の彼女はショートボブだった。 ……嘘つき。
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