それでも、海の碧み掛かった青さは変わらず美しかった。

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今まで満足していたその行為が、淡白なものだったのだと初めて知った。 荒れた海の波のように何度も絶頂が押し寄せる。 「もう……ダメ。お願い……許して。……あっ」 懇願するその肩が激しく仰け反る。 「まだ……だよ。漸く手に入れたんだから。もっと……味わわせてもらわなきゃ」 そう言いながら、激しく腰を動かす名前も知らない男。 ひれ伏す形の彼女に背後から容赦なく突き刺す。 「や……壊れちゃう……」 「良いよ。壊れても……」 先程から一方的に攻められたままで、声は枯れ喉の乾きが執拗に襲う。近くに時計が見当たらなくそれが一体何時間続いているのかも分からない。 ただ、薄れ行く意識の中で空に赤紫が混じり始めたのだけは目の端に捉えていた。 刺すような眩しさに閉じたままの瞼をぎゅっと強く瞑る。 霞の掛かったようにぼんやりと、なかなか動いてくれない身体が鉛のように重い。 肩から指の先端までを何かがゆっくりと優しく這う。 なんて心地良い。 それが人の指だと分かったのは、もう一つキスを降らす唇が加わったから。 ……ああそうか。 知らない男とあれほどの激しい夜を交わしたのだった。 思い出して背面から抱え込んでくる男にゆっくりと視線を向けた。
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