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「ほら、これも着けてみて」
パレオを後ろから腰に巻き付けるその手付きが手慣れている。
それに嫉妬のような苛立ちが微かに生じたが、バカみたいとすぐに打ち消した。別に自分の男ではない。この場限りと割り切っている。
あの抱かれた熱が少し狂わせているだけ。
分かってる。
自分に言い聞かせた。
どこまでも続く、その色はどんな言葉で言い表せば良いのかと、悩む。
パレオの裾が濡れていたが気にせず彼と手を繋いだままゆっくりと遠浅の海の中を歩いた。
ずっとこのまま、彼と一緒に歩んでいけたなら……。
たった一晩共に過ごしただけで彼の事など何も知らない。名前さえも。
それでも繋いだ手の感触も声のトーンも、触れる肌も身体の相性も。全てが堪らなく心地良い。
この想いを口にしたら、彼は呆れるだろう。たかだか体を重ねただけで自分の何が分かるのだと。
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