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窓もなく白い壁に囲まれた訓練場をぐるりと見渡す。閉塞的なこの場所で、
おもいおもいに訓練を続けるフェイスたちの姿がある。
組み手をするもの、対策を練りあうものたち、基礎訓練を地道にこなすもの――
手を抜くものは一人たりといず、実に頼もしい連中だ。
だが、アルカーに対抗できるかは……難しいだろう、というのが本音でもある。
アルカーは、人間だ。素性はようとして知れないが、生身の人間であることだけは
判明している。
ただの人間が、超人であるフェイス・アンドロイドを凌駕できる理由。
それは奴が"炎の精霊"をその身に宿しているためだ。
"炎の精霊"は、人間どもを超越した科学力をもつフェイスダウンですら、
その正体が掴めぬ謎の超常存在だ。
元はといえばそれとて、組織で研究していたものなのだが――
「……いまいましい人間め」
またも苦々しい事を思い出し、思わず口から悪態がこぼれる。
舌があれば舌打ちしたいところだ。
気持ちを切り替えて、1182号に目を向ける。その後姿に少し気分が晴れる。
1182号は一日中アルカーの映像を見ている。無論、ただ見ているだけではない。
食い入るようにその戦いを観察し、奴の動きを研究しているのだ。
何時間も画面にかぶりついていたかと思えば突然立ち上がり、組織が作った
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