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ダミー・アルカーと模擬戦をする。勝率は100%だ。
それどころか、ダミー・アルカーの行動パターンの誤りや
不足したデータを指摘し改良している。
彼の意見を聞き入れた後は驚くほどアルカーに近づいていくのだ。
アルカーに対する分析力は、組織の中でも随一と言っていい。
「……あるいは彼なら、やってくれるかも知れんな」
幹部特権でつけくわえた、ひげを模した意匠をつまみ撫でる。
頼りになる同胞を見るのは、ここちよいものだ。
・・・
秘匿された製造工場から出荷され、わずかな戦闘訓練の後は各地で
工作活動を繰り広げる。その過程で誰が傷つこうと失おうと、気にとめる
こともしない。それが"フェイスダウン"。それが"フェイス"。
その戦闘員であるこのオレも、同様に何も感じることもなく、誰かを傷つけ奪う――
はずだった。
――オレは、戦闘員1182号。
悪や正義の定義はオレにはわからない。
自身が強いか弱いかも興味はない。
ただ一つ、オレは生まれたときに与えられた戦闘規定を塗り替えた。
戦え。
手が届く誰かを、守るために。
ここに遺す記録は、裏切りの記録でもある。
共に生まれ育った同胞をこの手に掛け続けた告解。
だがその思い出はけして孤独なものではなかった。
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