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・・・ ヴォォォァン、と腹にまで響くような重低音が座面から伝わってくる。 ツザキ社製、Xinobi《シノビ》 NX-6L。 排気量にして600CCを越える大型バイクのエンジン音だ。実のところ、 上から現場に駆けつける足として持たされただけで、さして詳しくもない。 だがこの身体に伝わる振動と、風を切って走る感触は、好きだった。 エッジの効いた猛禽のようなフォルムも、悪くない。 赤く塗られたガソリンタンクに肘をつき、ヘルメットに仕込まれた無線機の声に 耳を傾ける。 「――雷久保氏から連絡があったのは三日前だ。……これまで頑なに自身の所在を  明かそうとしなかった氏だが、どうやら"フェイスダウン"に嗅ぎつけられたようだ。  現在は身を隠し、我々に保護を求めている」 耳元のスピーカーから凛とした声が流れてくる。その女性の声は飾り気のない 話し方によく合い、心地よい。 が、その心地よさに耳を奪われている場合でもない。事態は深刻だった。 「……十年以上もの間"CET"の庇護もなく隠れ続けていた博士が、俺たちと  直接コンタクトを取りたがるとは。よほど切迫しているということですか、本部長?」     
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