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「博士といっても、博士号はもっていないがな。さておき、実際状況はよくない。
雷久保氏が集合場所に指定したその緋衣路市だが、先行した捜査員から
"フェイス"の活動痕跡を見つけている」
通信相手――俺が所属する"超常集団取締部隊"
――通称"CET"の作戦本部長である御厨仄香女史の言葉に、
表情が厳しくなる。
「――情報が漏れていると?」
「雷久保氏が我々と接触したがらないのも当然だな……」
女史には珍しく、声に疲れをにじませている。だが無理もない。
"フェイスダウン"。
その活動が明るみになったのはここ十数年の話だが、その結成は数十年……
いや、彼らがもつ科学技術を考えるとそれ以上昔から存在していたと見られる
悪の秘密結社だ。
生体アンドロイド、無から作られた機械生命体である"フェイス戦闘員"を手駒に、
人々を襲う凶悪な集団である。
彼らに襲われた人間は、あらゆる自発的行動を示さなくなる。まるで無気力になり、
放置すればいずれ餓死する人形のような状態と化す。
本来なら、その被害が確認された時点で警察または公安が動く事案だ。
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