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「無事でいろよ、マリア!」
俺はただ走り続けた、心底冷える夜の街中をばく進した、当てもなく闇雲に。
奴らがどこにいるのかなんては見当も付かない。だけど大概の悪党ってのは夜の光が大好きなんだ、光に集まる蛾と一緒だ。光に惑わされてくるくる踊ってる。だからこの方向で間違いない筈。
……いや待てよ。中には光も届かぬ深い闇も好む奴もいる。闇に潜むカマキリのように、獲物が来るのを待ち構えてる。ってことは港の方かも。そんなふうに考えるがスピードを落としはしない。
ヴォーーン! 冷たい空気を切り裂いて、甲高いマシンのエキゾーストが響きだした。国道を疾駆するのは二人乗りの単車。赤いkawasaki(カワサキ)・750RS、通称ZⅡ。俺の側によるとすかさず減速する。
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