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「だけど堀田先輩は、春菜を彼女として……」
「いい加減気づけよ。堀田は三崎に利用されてるんだ。全てはチームの為、己の欲望の為」
そこまで聞けば疑いの余地はないだろう。堀田は三崎の為に女をかき集めていた。それにまんまと引っ掛かったのが春菜。そして今現在、アルタイルの集会に参加している。
「だ、だったら春菜にそれを教えなきゃ」
その意味は流石の太助も理解したようだ。スマホを取りだし、春菜に繋ぐ。だが春菜は出る様子はない。何度繋ごうと同じ結果だ。
「シ、シュウ?」
やがて俺に縋るような視線を向けた。
「わりぃな太助。俺は動かないぜ」
俺は言った。非情にも思えるが、そう答えるのが一番だ。
「だって、俺が後押ししなきゃ春菜は」
「斉藤」
一弥が言った。
「確かにこれは堀田や三崎の罠だ。だがそのぐらいのこと、春菜って女も理解してなきゃおかしいだろ? 所詮男女の仲、肉体関係ぐらい分かってて付いていった。それだけのことじゃねーのか?」
その台詞は的を得ている。俺が動かない訳と一緒だ。酷な言い方だが、男を見る目の無かった春菜も悪い。自分で付いて行ったんだ、自己責任だろう。
「だけどほっとけないよ。俺、行かなきゃ」
しかし太助は納得しない。ふらふらっと外に向けて歩み出す。
「あ、おい!」
俺は慌てて呼び止めた。それでも太助は、聞く耳を持たず外に走り出す。
「ば、馬鹿野郎!」
俺も後を追い、レジを飛び出した。太助が単身、武装チームに乗り込んだところでなにも変わらない。それどころか逆に返り討ちに遭うのが実情。
しかしその声は太助には届かない。来店してきた若いカップルにぶつかりつつも外に飛び出す。怪訝そうに視線を向けるカップル。仕方なく俺は謝る。その間に太助の姿は見えなくなっていた。
外は真っ暗だ、星ひとつ輝かぬ夜空。所々に設置された街灯が力なく灯るだけ。ごうごうと吹き荒れる嵐。いつしか冷たい雨が、ポツリポツリと降り出していた。
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