欲望の街角

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「おい! おい!」  通話口相手に声を荒げても返事はない。 「なんだよ今のやろーは!」  堪らずリダイアルした。だがやはりマリアの返事はない。 「くそっ! 電源が切られてる、今のやろーの仕業だな」 「どうした? シュウ」  その様子に気付き、一弥が言った。 「うるせぇ、黙ってろ!」  俺は声を荒げる。そしてイラつく感情を必死に抑える。焦っても仕方ねー、冷静になるんだ。それに今の声って、どこかで聞いた声だ。 「……思い出した、堀田だ」  そして気づいた。思いたくないことだが、マリアは春菜と一緒にいるってことだ。つまりそれはアルタイルの集会に参加したってこと。そして奴らの狙いは…… 「まったくソウイチロウのやろーは一緒じゃねーのかよ」  すかさずソウイチロウに電話を繋げる。今の時間、ソウイチロウがマリアの警護をしている筈。  焦れったい程の呼び出し音の後、奴が出る。奴は暢気(のんき)な様子だ。『あれー、僕の番だったっけ』とか、『シュウ君の順番じゃないの』とか、呆れた返答。終いには彼女がどうだとか、ヒィヒィ言わせるとか、エロい話ばかり。まったく使えない変態だ。俺はムカつきと共に通話を切った。
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