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いつ見ても此処は好きになれないー研究所の入口に立った青年は建物を見上げた。明け方の薄ぼんやりとした空気が鬱陶しい。それよりもさらに背後にある気配が鬱陶しい。  ・・・しばし思案。  だがしかしあの人いる此処は好きだー周りに転がった黒装束の塊を避けながら自動ドアをいくつか抜け、迷わず進んでいく。途中窓に映る自分を見て、ひどく汚れていることに気付く。  ・・・再び思案。  あの人が在るから僕は此処に在るー洗面所に立ち寄って手を洗う。服は・・・致し方ない。目的の部屋へ急ぐ。再び現れた気配は、洗ったばかりの手を汚さない様に脚で処理した。  あの人さえ在ればいいのだー塊と血だまりをできるだけ避けながら目的の部屋の前に辿り着く。瞳を閉じて深く呼吸する。あぁ、この気配は・・青年は微笑んだ。左手をかざしてセキュリティを解除する。
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