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しかし、迷斎さんは人形の方には見向きもせず。さえりさんの髪を掴み、私に言いました。
「弁天堂、勘違いしているようだから教えてやる。泥人形はこっちだぞ」
「…………えっ」
それから迷斎さんは、遅れて来た理由と、今回の件について話始めました。
一ヶ月、買い物帰りの母と娘いました。
その日は、娘の十八回目の誕生日であり、母と娘の二人だけの細やかな誕生日会を行うための買い物帰りでした。
しかし、運命とは時として残酷であり、帰宅途中の母と娘に一台の車が突っ込んで来たそうです。
交通事故。
運転手は飲酒していたようで、前方不注意とブレーキをかけるタイミングが遅れたために起きた事故でした。
しかしこの時点では、母も娘も足の骨を折るなどの怪我は負ったものの、命に関わる重症ではなかったのですが、不幸はここで終わりではなかったのです。
事故現場は、人通りの少ない裏路地で起きました。運転手の男は某大手企業の重役であったようで、飲酒の上に怪我まで負わせたとなっては、将来が閉ざされてしまう。
そう思ったようで、救急車を呼ばず二人を車に乗せて拉致したそうです。
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