弁天堂美咲と泥人形《マッドロイド》05

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弁天堂美咲と泥人形《マッドロイド》05

 場面は戻り、土御門邸の玄関の前。  灯りの点いていない玄関ですが、この蒼白い肌は間違いなくさえりさんです。  「あの……遅くなりました。弁天堂です」  「…………」  返事はありませんでした。表情もなく、視線もどこを向いているのかもわからず、ただ暗い玄関に立っているだけのさえりさん。  尋常ではない光景を目の当たりにしながら、私は何もすることが出来ませんでした。  「…………あの……土御門さ――」 「!!」  その時です。焦点の定まっていなかった、さえりさんの瞳孔が開いたかと思うと、そのまま私に襲いかって来ました。  「……うぅ…………つ……つち…………」  「…………」  蒼白く細長い綺麗な指が、私の首を締め上げます。およそ、女性とは思えない力で、私を持ち上げ首を締め上げます。地面から離れた足が私の意思とは無関係に、バタバタと動いていました。この苦しみから逃げたい一心なのでしょう。  やがて、意志が薄れて行き、私は気を失ってしまいました。
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