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「おじょうちゃん。お腹が減っているのかい?」
誰?私に声をかけてくるのは。
「僕は君を、ずっと見てきたよ」
見えない…。周りが真っ暗だ。「あなたは誰?」と声を出そうとしても、声が出てくれない。なんで?
「そりゃ喋れないよ。おじょうちゃんは死んじゃったんだから。」
ああ、そうか。わたしは…死んだんだ。
「酷いよね。君を生んだ両親は。弟ができた途端、君を捨ててしまうなんて」
そう…だね。怖かったよ。お父様の顔。
まるで私を、バケモノを見るかのような顔で。
「そう。君は何も悪くない。ただ、女の子だっただけ。そうだろ?」
そうだよ。私は、ただ、女の子だっただけ。
「憎いよね?」
そう…。憎い。
私は、あの両親が憎い。私はこんなに苦しんでいるのに。
裕福に生活して…暖かい部屋で暖かいご飯を食べている。あの家族が。
私が元々いたあの場所に居座る、あの弟が。憎い。
「じゃあさ、あいつらよりも幸せになってやろうぜ。これからさ。」
これからも何も…私は死んじゃったんじゃ…。
「大丈夫だって。僕に任せといてよ。君は今から生き返る」
-君はこれから、人の精気を食べて生きるんだよ-
「精気ってなにーーー!」
声が出た。
「ん?あれ。声が出る。」
体も、しっかり動く。さっきまで、私は暗い路地で飢えて…それから…。
「そう言えば、変な事言ってた人は誰なんだろう…」
顔など、目を閉じていたからわからない。名前も言わなかったからわからない。覚えているのは『君はこれから、人の精気を食べて生きる』という言葉だけ。
「とりあえず、起きないと……ぁいたァ!」
何かにおでこをぶつけた。目の前に壁があるのか?
いや。私は寝転んでる。よく見てみると、おでこをぶつけた所から『パラパラ』と何かが落ちてくる。
これは…土?
「もしかして、ここは地中なの?」
幸い、土はそこまで固くないようで、手で掘れる程度だった。
「とにかく外に出ないと」
精一杯の力を込めて、土を掘る。掘る。
しばらくして、外に出れた。当たりは一面、真っ暗だ。
「ここはどこなの…?」
周りを見渡すと、白い十字架がたくさん並んでいた。
「…もしかしてさ、ここって」
多分予想通りであろう。
ここは墓地だった。
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