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「何ここ…」
あたりを見渡しても、見える範囲内は全て墓地のようだ。暗闇の中と言っても、かなり広いように見える。
「な、なんか不気味だなぁ…とりあえず、人がいるところに行こう」
私は見たこともない墓地を思うように進むことにした。進みながら私は『どうせ帰る場所などないから』『わたしは、死んでいるから』と、ずっと思考を巡らせていた。
しかし、歩いていると、背中の方に違和感がある。
何かを引きずって歩いているような、そんな感覚。
頭も、なにか重く感じる。まるで頭になにか乗せられているような感じだ。
そういえば、あれから食事をしていない。
「体がだるいだけでしょ…」
私はそう自分に言い聞かせていた。
ふと、あの夢?の中で喋っていた誰かの言葉を思い出した。
『君はこれから、人の精気を食べて生きるんだよ』
「なんなのよ…わたしは、死んだはずでしょ…?」
疑問は沢山あるものの、なぜが足は一方向に向かって歩き続けている。
宛などない。ただ「自分の今の姿」を確認したかったのだ。ただひたすら、自分を確認できる場所まで。
しばらくして、閑静な住宅が立ち並ぶ街についた。
とりあえず、街灯があり、ガラスで体を確認できる場所まで歩くことにした。
どうやら、深夜のようだ。人通りは少なく、歩く人も酔い潰れ、壁にもたれかかって寝ているおじさんや、疲れた顔で街を歩く人。そんな人ばかりだ。
そんな中やっと、鏡になりそうなガラスを見つけた。
「うわぁ!!!」
後ろから声が聞こえる。酔い潰れたおじさんだった。
「…?なに?」
私が振り向くと、彼は「あ、悪魔だ!うわぁぁ!!」と言って一目散に走って逃げようとしていた。
しかし、酔いが覚めてないのか、すぐに転ぶ。
「あ、痛たぁ!」
「大丈夫ですか?怪我はない?」
見かねて、手を伸ばすと、おじさんは私の手を払い除けた。
「うわぁ!やめてくれぇ!食べないでくれぇ!」
そう言って、ヨタヨタと走って逃げる。
さっきから何を言っているんだこのおじさんは。私が悪魔に見えるのか。
ふと視線を横に向けると、そこにはガラスに写った自分の姿が見えた。
頭からは黒い翼が生え
腰下あたりからは、黒く長い尻尾が生え
どこからどう見ても……
「悪魔じゃない……わたし」
どうやら私は
悪魔になったようだった。
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