少女は飢え、絶命する

3/3
前へ
/4ページ
次へ
「何ここ…」 あたりを見渡しても、見える範囲内は全て墓地のようだ。暗闇の中と言っても、かなり広いように見える。 「な、なんか不気味だなぁ…とりあえず、人がいるところに行こう」 私は見たこともない墓地を思うように進むことにした。進みながら私は『どうせ帰る場所などないから』『わたしは、死んでいるから』と、ずっと思考を巡らせていた。 しかし、歩いていると、背中の方に違和感がある。 何かを引きずって歩いているような、そんな感覚。 頭も、なにか重く感じる。まるで頭になにか乗せられているような感じだ。 そういえば、あれから食事をしていない。 「体がだるいだけでしょ…」 私はそう自分に言い聞かせていた。 ふと、あの夢?の中で喋っていた誰かの言葉を思い出した。 『君はこれから、人の精気を食べて生きるんだよ』 「なんなのよ…わたしは、死んだはずでしょ…?」 疑問は沢山あるものの、なぜが足は一方向に向かって歩き続けている。 宛などない。ただ「自分の今の姿」を確認したかったのだ。ただひたすら、自分を確認できる場所まで。 しばらくして、閑静な住宅が立ち並ぶ街についた。 とりあえず、街灯があり、ガラスで体を確認できる場所まで歩くことにした。 どうやら、深夜のようだ。人通りは少なく、歩く人も酔い潰れ、壁にもたれかかって寝ているおじさんや、疲れた顔で街を歩く人。そんな人ばかりだ。 そんな中やっと、鏡になりそうなガラスを見つけた。 「うわぁ!!!」 後ろから声が聞こえる。酔い潰れたおじさんだった。 「…?なに?」 私が振り向くと、彼は「あ、悪魔だ!うわぁぁ!!」と言って一目散に走って逃げようとしていた。 しかし、酔いが覚めてないのか、すぐに転ぶ。 「あ、痛たぁ!」 「大丈夫ですか?怪我はない?」 見かねて、手を伸ばすと、おじさんは私の手を払い除けた。 「うわぁ!やめてくれぇ!食べないでくれぇ!」 そう言って、ヨタヨタと走って逃げる。 さっきから何を言っているんだこのおじさんは。私が悪魔に見えるのか。 ふと視線を横に向けると、そこにはガラスに写った自分の姿が見えた。 頭からは黒い翼が生え 腰下あたりからは、黒く長い尻尾が生え どこからどう見ても…… 「悪魔じゃない……わたし」 どうやら私は 悪魔になったようだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加