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少女は飢え、絶命する
私は、裕福な家庭に生まれた。
小さい頃から欲しいものはなんでも手に入ったし
家にいた使いのメイドには『かわいい かわいい』とよく言われたものだ。
このまま、この家の当主になって。なんの不自由もせずに私は生きていけるんだ。そう思っていた。
13歳の冬までは。
「お前はもういらない」
私は父親に罵倒され、そして捨てられた。
本来なら私がいるべきであろう愛する両親の腕には、産まれたばかりの男の子が大切そうに抱かれていた。
世の中は男尊女卑の世界。
『男児は重宝され、女児は穀潰し』
この世界の基本ルールのようなものだ。
私はこの裕福な家庭の後継者候補から外れたのだ。弟が生まれたことによって。
そんな中、女だった私の居場所は存在せず、私は両親に捨てられ、孤児となった。
飢えはすぐに襲ってきた。
「あの…食べ物をください…お願いします…」
声をかけても、誰も反応などしてくれない。
私をゴミのように一瞥し、中には唾を吐きかける人間さえいた。
それでも私は、飢えを凌ぐために三日三晩、物乞いをした。物乞い以外に、方法を知らなかった。
しかし結果は悲惨。
手元にあるのは噛み潰し、味のなくなったガムと、食べ終わったフライドチキンの骨。
どちらもしゃぶり尽くして、腹の足しにもならない。
腹の虫は、ついに『限界だ!』と音を出し、歩くどころか立つことさえ、今の私には不可能だ。
きっと、普通の家庭に生まれた人間ならば、この飢えを凌ぐ方法を知っているのだろう。
しかし、生まれた時から裕福で自分で生きる術を知らない私は、食べ物にありつける方法を「お腹減った」とメイドに訴えるという選択肢以外知らないのだ。
私はひっそりと、静かに
暗い裏の路地で餓死して行った。
『ああ。私は…こんな所で…』
つい3日前までは、暖かい家にいたのだ。
最後に食べたご飯はなんだっけ。覚えてないや。
父親の凛々しく整った顔が私に対する嫌悪感に変わった。母親は、私とは目も合わせてくれず、弟を抱きかかえ、そっぽを向いていた。
あの時のふたりの顔が…今でも忘れられない。
出来ることなら…また、あんな幸せな家庭に…。
また、生まれたい。
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