少女は飢え、絶命する

1/3
前へ
/4ページ
次へ

少女は飢え、絶命する

私は、裕福な家庭に生まれた。 小さい頃から欲しいものはなんでも手に入ったし 家にいた使いのメイドには『かわいい かわいい』とよく言われたものだ。 このまま、この家の当主になって。なんの不自由もせずに私は生きていけるんだ。そう思っていた。 13歳の冬までは。 「お前はもういらない」 私は父親に罵倒され、そして捨てられた。 本来なら私がいるべきであろう愛する両親の腕には、産まれたばかりの男の子が大切そうに抱かれていた。 世の中は男尊女卑の世界。 『男児は重宝され、女児は穀潰し』 この世界の基本ルールのようなものだ。 私はこの裕福な家庭の後継者候補から外れたのだ。弟が生まれたことによって。 そんな中、女だった私の居場所は存在せず、私は両親に捨てられ、孤児となった。 飢えはすぐに襲ってきた。 「あの…食べ物をください…お願いします…」 声をかけても、誰も反応などしてくれない。 私をゴミのように一瞥し、中には唾を吐きかける人間さえいた。 それでも私は、飢えを凌ぐために三日三晩、物乞いをした。物乞い以外に、方法を知らなかった。 しかし結果は悲惨。 手元にあるのは噛み潰し、味のなくなったガムと、食べ終わったフライドチキンの骨。 どちらもしゃぶり尽くして、腹の足しにもならない。 腹の虫は、ついに『限界だ!』と音を出し、歩くどころか立つことさえ、今の私には不可能だ。 きっと、普通の家庭に生まれた人間ならば、この飢えを凌ぐ方法を知っているのだろう。 しかし、生まれた時から裕福で自分で生きる術を知らない私は、食べ物にありつける方法を「お腹減った」とメイドに訴えるという選択肢以外知らないのだ。 私はひっそりと、静かに 暗い裏の路地で餓死して行った。 『ああ。私は…こんな所で…』 つい3日前までは、暖かい家にいたのだ。 最後に食べたご飯はなんだっけ。覚えてないや。 父親の凛々しく整った顔が私に対する嫌悪感に変わった。母親は、私とは目も合わせてくれず、弟を抱きかかえ、そっぽを向いていた。 あの時のふたりの顔が…今でも忘れられない。 出来ることなら…また、あんな幸せな家庭に…。 また、生まれたい。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加