1人が本棚に入れています
本棚に追加
02
・・・
暗いハイウェイを点々と街灯が照らす中を、長年使用してきた愛車でひた走る。
この期におよんで事故など起こしてはたまらないと思うものの、はやる気持ちと
恐怖とでアクセルペダルを踏む力が一定しない。
「あなた……」
助手席に座った妻が、不安にかられ諌めるように声をかけてくる。
わかっている、と安心させるように笑顔をむけたつもりだったのだが、
実際には硬い表情でちらりと目線を向けるにとどまった。
「――わかっている、わかってはいるんだ。だが……」
「大丈夫、大丈夫です。もう、あと少しじゃありませんか」
「わかっている。わかっているんだ……」
もっと気のきいたことを言えるはずが、恐怖心が身体も心も縛り付ける。
十何年ものあいだ、あの組織に捕らわれ彼らの研究に従事させられていた。
もともとは進化分子工学という分野の研究者……の道を目指していた学生だった。
当時私が偶然発見した遺伝的アルゴリズムが奴らの目に留まり、拉致されたのだ。
奴らのアジトに連れ込まれた時の衝撃はいまだに覚えている。
当時の人間社会が持つ科学技術を遥かに越えた実験設備、その成果物。
いやそもそもが私を拉致した生体アンドロイドそのものが、私の認識力を
最初のコメントを投稿しよう!