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「……情けねぇな、ホント俺って」
和也君はどこか自分に言い聞かせてるように小さい声でそう呟くと、ゆっくりと立ち上がった。
「明菜ちゃん、ちょっとついてきて」
ハンカチから顔を覗かせた私に優しく微笑んで、そして海に向かって歩き始めた。
私も彼について後を追う。
快晴の空から降り注ぐ太陽の光。建ち並ぶビルやレインボーブリッジの向こう側に佇む青。
そんな世界の中でも彼の背中は眩しい。
和也君は波打ち際まで来ると立ち止まると、私に振り向いて、そっと右手を差し出した。
「これ……何か分かるよね?」
ゆっくりと開いた掌に乗っていたのはシルバーリング。初めて会った時から今日まで彼の胸元にはその指輪が輝いていた。
私は黙ったままこくりと頷く。俯いた瞬間に胸が張り裂けそうになって、また涙が溢れてきそうになる。
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