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「知ってることがあるなら話して欲しいもんだね」
降って湧いたような大問題に
九条家の当主は項垂れ頭を抱える。
いまや傍らの青ざめた息子と
可愛い初孫を宿したはずの妊婦は
嘘で塗り固められた裏切り者でしかなく。
「腹の中の子が拓海の子だというのは……本当の事なのか?」
事実が事実なら八方塞り――。
「それは――」
誰も逃げ場などない。
悲劇というにはあまりにも下世話で
喜劇というにはあまりにも笑えない。
「何とお答えしたらよいのやら」
征司は答えを探している風でもなかった。
「結論から言って誰に責任があるかと言えば――」
ただ鋭い視線の先に
僕を捉えているのだけは確かだった。
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