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こんな時に――。
「表へ出ろ！話をつけよう」
「望むところだ。吠え面かくなよ？坊ちゃんが」
「は？誰が坊ちゃんだって？君の方だろ！」
外野を取り残したまま
頭に血が上った男たち二人は
場外乱闘の様相を呈し始める。
「ちょっと……！」
間に挟まれた貴恵が今日初めて声を上げた。
「外でフェンシングの試合をしたら？私がレフェリーをするわ」
このタイミングで何を言うかと思ったら
「なんなら本場のフランスまで行ってもいいけど……」
どさくさに紛れて逃げようって腹だ。
だけどもう遅い。
「――出ろよ」
取っ組み合い寸前の兄と夫の耳には
何も届いちゃいなかった。
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