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「出るの?」
思わず身が強張った。
「そうだね。一生逃げ通すことも出来ないだろうし」
言うと
九条さんは自嘲気な笑みを浮かべて
携帯電話を手に僕らの傍を離れて行った。
「なあ、和樹――妙だと思わないか?」
九条さんがいなくなった途端
声を潜めて椎名涼介は馴れ馴れしく僕の肩を抱く。
「やめて」
拒絶すれば
「まだ僕と口を利く気にならない?」
ならいいけど――なんて
思わせぶりに嘯いて。
結局
「妙って……何の事です?」
「そうこなくちゃ」
悔しいかないつものことだ。
やっぱりこちらから歩み寄ってしまう。
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