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「考えてもみろよ。征司くんがそんな単純な真似するかな?」
「え?」
「あのプライドの塊がだよ?君を連れて逃げられたからってすぐ――九条のパパやママに言いつけるような情けない真似するかって聞いてるんだ」
「それは……」
言われてみればそうだ。
あの人の原動力は正義感ではない。
ふざけた戯れ――遊び心だ。
余裕がないところを見せるのは最も嫌う。
だとしたら今はまだその時じゃない。
もっと絶妙のタイミングで
手の込んだ復讐を用意するはずだ。
「それじゃ……」
僕が言いかけたちょうどその時
バスルームのドアの向こうで
何か派手に落とす音がした。
そして――。
「な……!なんだって……?」
電話している九条さんが
いつになく取り乱した声で叫ぶのが聞こえてきた。
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