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「こんにちはー」  シュウから習った本土の言葉の一つだ。  たった今授業が終わったらしく、『教室』の中ではみんなが思い思いの場所へ行くところだった。 「おーコトじゃん。いったいどうし―…」  シュウが目を丸くさせ、僕を見る。  ちなみに、僕らの名前はシュウが考えた。  本当はクスシにも僕らの名前をつける権利はあったが、考えるのが面倒だといって放棄したので、シュウ一人が適当に決めたみたいだった。  シュウが眉と眉の間にしわを作った。 「…コト、その悪趣味な帽子は何かな」  シュウは目を細め、変な顔をしている。  僕はシュウより背が低いので見下ろされる形になる。 「あくしゅみ?」  聞きなれない単語だった。 「いいとは言えない好みのことだよ」  シュウはなげやりに答えると、ゆっくりと近づき、僕の帽子を手に取った。  僕の帽子はねずみ色のぼろぼろの生地に、鼻が高い外国の人か若い魔女を連想させる顔が描かれたものだ。  その帽子は怪しい笑みを固定させたまま、シュウを見つめている。  僕は一目見て可愛いと思ったのだ。  僕の目を否定している言葉に、さすがの僕も黙ってはいられない。 「可愛いじゃんかーその可愛さに一目ぼれして海岸で拾ったのを頑張って直したんだ!それを踏まえて僕の目と努力を評価してよ!ちょっ、なにしてるの!?壊さないでね!?」  シュウは帽子を上にしたり下にしたり縫い目をひっぱったりと、めちゃくちゃなことをしだしたので僕は慌てて取り返そうとした。  シュウが後ろを向き、スタスタと机に戻った。そして針と糸が入った箱を取り出し、その場で帽子を直し始めた。
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