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ぼろ雑巾のような帽子がどんどん整えられていき、あっという間に綺麗な帽子になった。
「今度直して欲しいのがあったらちゃんと言ってね」
にこにこと笑いながら帽子を返してくる。シュウに少しいらっとした。
「…シュウ、デリカシーのかけらもないな。早く亡くなったほうが良いと思うよ」
「なんでー?てか、こんなところで何してるの?」
教室の出入り口でずっと僕らを見ていたらしいクスシが、シュウに冷たい眼を向けている。
「暇になったから軽く散歩」
引きずるように重い歩き方で、僕達の近くに来た。
「そんな足で大丈夫か?なんて。それであんまり外に出ないほうが良いよーシシクイがうようよしてるんだから」
シュウが茶化した。
人間の姿に化けたり、寄生したり、時には古代生物になり、時には架空生物になる、未知の生物。僕らはそれを総称して『シシクイ』と呼んでいる。
「君に死なれたら困るよー僕は先生の仕事で忙しいんだから」
いやな笑みを浮かべてシュウが言う。
クスシは気にした風でもなくただ首飾りをいじっていた。
「…ふん、別に俺がいなくても…」
「そう卑屈になるなよ」
クスシの顔がどんどん暗くなっていくので僕は大声を出した。
驚いた双子を前にして、僕は窓を指差しながら窓に駆け寄った。
「ねぇ、見てよ外!!」
僕は窓から顔を出し、水平線を見つめた。
そこにはさっきまでなかった島が浮かんでいた。
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