7/10
前へ
/10ページ
次へ
 島の海岸に変なものが浮いていた。  空気を中に閉じ込めた、船みたいなものだ。 「子供用のプールみたいだな」  反射的に質問しそうになったが、今は中のものの方が気になる。 「…酷いな、これは」  小さな人間が真っ白い顔で寝ている。 「何この子」 「赤ん坊…まだ息はあるけど、だいぶ憔悴しているな」  赤ん坊、憔悴。知らない言葉を記憶する。  集は赤ん坊と呼ばれるものをゆっくり持ち上げ、僕が被っていた帽子を取り、その中に赤ん坊を入れた。 「…おう!?」 「我慢してね」 「お、おう…」 「戻るぞ」  仕方なくシュウに従い、彼の後ろを走ることにした。  しばらく走り、大通りに差し掛かったとき、前に大きなシシクイが現れた。  …二枚貝だ。 「ハマグリだな…なんてぴったりな…」  シュウが引きつった笑みを浮かべる。  シュウが一瞬、隣で立ち止まりそうになるが、僕はそのまま走った。  僕の髪は伸縮性があるコードのようなものだ、とクスシが言っていた。  僕には意味が分からなかったけど、それを二つに分けて伸ばして二枚貝に取り付けた。 「シュウ、先に行って」  ちょっと間があって、何かを決意した顔でシュウは走った。 「ごめん」  追い抜くときにシュウが囁いた。  別に構わないのに。  しばらくしてシュウの背中が小さくなり、やがていなくなった。  僕はシシクイを見る。    大きな二枚貝は変なにおいを撒き散らしていた。  シシクイに食われた仲間達を思い出す。  あれは仲間達ではなかったが、シシクイにはかわりない。 「さて」  二つのケーブル(?)の先に稲妻が走る。バチバチと物凄い音がなった。   「…今日のご飯はしょぼいねぇ」  二枚貝の間から触手が伸び、捕まった。やっぱりくさい。  そおのまま貝の内部に入り、一気に電気を流し、焼き焦がした。  貝のいい匂いが腹を鳴らした。  貝を持ち上げて脱出し、空を見上げる。  木に囲まれすぎていて空は見えない。  うつうつとした気分でのんびり思った。  もって帰るのは大変そうだな。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加