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少し滲んだ包帯の赤と、彼女の唇を見比べる。
時間が長く感じる。
「メイ」
「メイ?」
「そう、紺田明」
「コンタメイ?明太子みたいな名前だね」
「……」
「でも、似合ってるよ。……もう一つの名前も聞いていい?」
「……アキラ」
「アキラ?ああ、ますます明太子みたいだね」
メイが笑った。その奥で、アキラの瞳は笑っていなかったが、そこにはいつもより淡い光が窺えた。
明太子が似合うなんて知性の欠片も感じないが、しかし、確かにそうかもしれない。
淡い赤。
染められた身体。
はち切れそうな皮膚。
割れては飛び出し、飛び出しては割れる。
内在する一粒、それぞれがまたそれを繰り返している。
どこかから抜け出すということも、どこかに入るということの繰り返しだ。
そこが広いか狭いかというだけで、結局僕らは囲いの中にいるのかもしれない。
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