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私はもう祈ることをやめ、そう呟きました。そして このことを伝えるために母の部屋に向かう時、家の電話がなりました。
私は直感でおじいちゃんのことだとわかりました。
母の部屋にいくと、ちょうど通話を終えた母が言いました。
「おじいちゃん、亡くなったって」
先ほどのこともあり、私は驚きませんでした。でも母にはどうしてもさっきの出来事を話す気にはなれませんでした。
「7時42分に亡くなったんだって」
母から聞いた時間で確信しました。
それはちょうど祖父に別れを告げた時間だったのです。
そして私は家族で祖母の家に行きました。
仏間に寝かせられた祖父は、穏やかな表情をしていました。
苦しみを長引かせてごめん、私は心の中でつぶやき、手をあわせました。
そしてその時、驚いたことが起きました。
枕元に飾られていた四華花が、近くに火の気もないのに突然燃え始めたのです。
私が気づき声を上げると、父親が慌てて消していました。
白い四華花の上部には焦げた跡が残っています。
「不思議なこともあるもんだね」
皆首をかしげました。
何故ならばろうそくは大分短くなっており、それに届かないくらいでしたし、線香も短くしてから焼香台にのせていました。
ただ、それはその時限りで四華花に再び火がつくことはありませんでした。
もしかしてあの火は苦しみを長引かせたと祖父が怒っているのだろうか、と不安になりましたが、心の中で謝ることしかできません。
通夜は滞りなく終わり、翌日の葬儀の日。天気はとんでもない悪天候で、凄まじい強風がふきあれていました。
私はそんな中、ただひたすらに祖父の冥福を祈っていました。
「ごめんなさい、おじいちゃん、どうか安らかに。阿弥陀様おじいちゃんをよろしくお願いします……」
祭壇に飾られた阿弥陀様の絵姿にそう、祈りました。祈ることしかもうできなかったのです。
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