3652人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
初めて会った崇の婚約者は
清潔そうな笑顔と、キュートな不機嫌な顔。2つの顔を持っていた。
「私達は本当に付き合っているわけじゃありません。」
と言って、俺を驚かせたけど、
崇が彼女の瞳を何度も覗き込んで楽しそうに話をしているので、
かなり、イカれているのがわかる。
あの歌声。
崇が心を持って行かれたのも納得できる。
でもさ、
大丈夫か崇。
社長は婚約者だって本気にしてるけど。
プラタナスのコーヒーを理由に近づくつもりなんだろうけど、
まだ、春妃さんの心はしっかり掴んでないよな。
悠介って幼馴染は結構ガードが強い。
家族っていうカードを持って、春妃さんを離すつもりはなさそうだ。
家族は春妃さんの宝物だ。大切そうに家族の話をする。
引き離すのは無理だ。
家族ごと、愛せるようになるしかないのかな。
崇は家族の繋がりが希薄な奴だけど、
崇に後を継いで欲しいって、大学院を卒業する直前に崇は急にいわれて、
決まっていた就職先を辞退し、プラタナスを継ぐ事を決めた。
家族の繋がりを鬱陶しいと思いながらも求めている。って俺は思ってる。
崇にとっては仲の良い家族を持った春妃さんが、きっと憧れでもあるかな。
上手くいくといい。
春妃さんは真面目で、優しくて、面倒見がいい。
崇の心もきっと、癒してくれる存在になるだろう。
柔らかい時折見せる笑顔を崇に向けてくれるといいな。
そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!