第7章 永野滉一の日誌。(コウイチ編)

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初めて会った崇の婚約者は 清潔そうな笑顔と、キュートな不機嫌な顔。2つの顔を持っていた。 「私達は本当に付き合っているわけじゃありません。」 と言って、俺を驚かせたけど、 崇が彼女の瞳を何度も覗き込んで楽しそうに話をしているので、 かなり、イカれているのがわかる。 あの歌声。 崇が心を持って行かれたのも納得できる。 でもさ、 大丈夫か崇。 社長は婚約者だって本気にしてるけど。 プラタナスのコーヒーを理由に近づくつもりなんだろうけど、 まだ、春妃さんの心はしっかり掴んでないよな。 悠介って幼馴染は結構ガードが強い。 家族っていうカードを持って、春妃さんを離すつもりはなさそうだ。 家族は春妃さんの宝物だ。大切そうに家族の話をする。 引き離すのは無理だ。 家族ごと、愛せるようになるしかないのかな。 崇は家族の繋がりが希薄な奴だけど、 崇に後を継いで欲しいって、大学院を卒業する直前に崇は急にいわれて、 決まっていた就職先を辞退し、プラタナスを継ぐ事を決めた。 家族の繋がりを鬱陶しいと思いながらも求めている。って俺は思ってる。 崇にとっては仲の良い家族を持った春妃さんが、きっと憧れでもあるかな。 上手くいくといい。 春妃さんは真面目で、優しくて、面倒見がいい。 崇の心もきっと、癒してくれる存在になるだろう。 柔らかい時折見せる笑顔を崇に向けてくれるといいな。 そう思った。
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