第1章 港町の喫茶店。

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朝、目覚めるとコーヒーのいい香りがしている。 私、仁科 春妃(にしな はるき)28歳 家は昔ながらの喫茶店をしている。 1番上の兄夏生(なつお)が喫茶店の隣の焙煎室で焙煎した豆を使って、 サイフォンで淹れたコーヒーの味と香りを確認するのが 毎朝の家族の習慣になっている。 家族といっても、3人の兄と、私だけで 両親は末っ子の私が15歳の時に 交通事故でいっぺんに亡くなってしまい、 残された喫茶店を兄たちが引き継いで 守っているっていう感じかな。 次男の秋太(しゅうた)は、コーヒー豆の仕入れと料理(主に洋食)が担当で、 2人の兄が喫茶店を経営して、 3番目の兄の冬司(とうじ)はゲーム開発会社に勤め、 私は近所の女子大を出て、親戚が経営する中堅の結婚相談所に勤めている。 「ハル、急がないと、遅刻するぞ。」とナツ兄(なつにい)の声がする。 「はーい」と返事をして、ベットの中に潜り込む。 冬の始まり。 11月の朝はベットからなかなか出られない。 私はエイっと、布団を蹴飛ばした。
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