月曜日が嫌いだ。

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7時48分発、家の最寄駅からの地下鉄に乗って、途中1度路線を乗り換え、職場のある駅に8時40分に到着する。 今は7時55分。乗車率は80%ほど。右手でつり革に掴まり、左手で鞄をぶら下げながら、斜め上に掲示された学習塾の広告をぼんやり眺める。 駅に着くたびに、数人だけが降り、代わりにドドっと大人数が車両になだれ込む。 自分のスペースが減り、右腕と腰のあたりに、誰かの体が押し付けられる。誰かに不快に思われないように、無意識のうちに体を小さくなる。 いつも思う。 ここで数人に混じり、自分もこの駅を降りたらどうなるのだろうか。 次の駅で降りて、今乗ってきた地下鉄と逆側のホームに移り、家に帰ったとしたら。そしたら溜まっている洗濯をして、ゆっくりできる。 もしくは駅を出て、映画を観たり、ゆっくり昼ご飯を食べるのもいい。 そんなことを考えていると、次の駅を告げるアナウンスが流れた。 8時10分、乗り換えだ。 ドドっと大人数が降りる波に流され、ホームに吐き出される。そのまま次の地下鉄まで周りに合わせて早足で歩いていく。 ふと、さっきの考えが浮かんだ。 今、この地下鉄に乗らなければどうなるのか。 いやいや、仕事があるじゃないか。 引き返すなら今しかないけれど。 もし、今日仕事に行かなければ‥ 仕事は溜まっているけれど、誰とも約束はしていないから、迷惑はかからないだろう。 休めるけど、休んだら明日は仕事がたまっているんだろうな‥ そんなことを考えていると、乗り換えのホームに着いてしまった。 いつもどおり、列に並び、前の人にならって電車に乗り込む。 後ろの人から中に押しこまれ、体は360°誰かの体温を感じる。 今日も結局、職場に向かってしまう。 いつもそうだ。 結局、自分は「電車に乗らない」という決断ができない。 入社当時から何百回という月曜日を、こうして流されて過ごしてきた。 今日も同じ。 きっと、これからも退職まで何百回もある月曜日には同じことを考えながら、結局何百回と電車に乗ることになる、と予言しよう。 8時23分、いつもどおりの駅名のアナウンスを聞きながら、いつもどおり諦めて、いつもどおり会社までの道のりを運ばれていく。 ふと、周りを見ると自分と同じような表情の男達、女達ばかりだ。 ああ、そうだよな。この気持ちは自分だけじゃない。 俺達は月曜日が嫌いなんだ。
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